Prologue

 


 日頃の喧騒を忘れて(と云っても私も日頃から世間離れしたような生活をしているのであまりかわらない気もしたが、でもまあ仕事を忘れて)針葉樹の美しい山々を眺めながら騒音のない生活。日頃携帯に頼っていたので時計がない。むろん、そんな山奥では電波も届かない。
したがって電源を切り、時としてうるさい携帯が鳴ることもない。テレビもラジオも、音楽もなにもない。唯一の大きな音は食事の時間を知らせるディナーベル。陽気なおばちゃんが鳴らすカラ〜ンカラ〜ンというベルの音はいつも定刻に山々にこだました。皆での夕食はいつも楽しく、特に夕食前のウェイティングバーでの一杯のビールは心身共に至福に満たされた。そのバーにある大きな暖炉の前のソファに集うのが私達の暗黙のルールとなり、皆日増しに出勤時間(?)が早くなった。ビールを飲みながら今日のトレッキングについて、馬について、またそれぞれの方のいろんな体験談など、話は尽きることがなかった。
・・・とここまで私はとても偉そうな文面を連ねているが、実は今回のメンバーの方々驚くなかれ皆さん60歳以上なのである!しかも70歳以上の方も3名!!私にとっては 親の年齢を超える人生の大先輩の方ばかりなので、いろいろな面でとても多くのことを学ばせて頂いた。




 ある夜、食事が終わって73歳の男性がロッジにあるグランドピアノを弾いてくれた。それは、とても流暢に、時々つまずくこともあるが一生懸命に。
普段ちょっとぶっきらぼうな感じもする方だったが、あまりに優しいそのメロディに涙が溢れてきた。
この前亡くなった、うちのメンバーのおばあちゃんと同じくらいの年。いろんな想いが頭をよぎった。この方は65歳でピアノを習い始めたそうだ。
陰には並ならぬ努力があったことだろう。その姿勢にとても感動した。弾き手も聞き手もほろ酔いで素晴らしい夜だった。
また、ある71歳の男性は68を過ぎて乗馬を習い始めたそうだ。そして3年目で一緒にイエローストーン国立公園の原野を駆けた。なんと素晴らしいことだろう!!
70過ぎて馬をやるには決して若くないと思うけど、みんなパワーがある。
私なんかと比べものにならないくらい強い底力を感じた。そして皆さんとても輝いていらっしゃる。正直、私の方がエネルギーをもらうなんて、思いもしなかったこの旅一番の教訓。
それは「人生、やる気さえあれば遅すぎることなんて何もない。」
時間がない、体力がない・・何をするでもしないでも、いろんな理由はあると思うけど、結局大事なのはそれを超えるくらいの精神力と人生を楽しもうとする前向きな姿勢じゃないのかな?またしても偉そうなことを勝手に言わせてもらうが、若干35歳の私はそう考えた。結論、人生を楽しもう!


    


Mountain sky ranchというゲストランチに4泊滞在し、ゆっくりとした時の流れを楽しむ。

ランチ入口,ロッジまで8km、広い!!  ロッジ入口


 長くなってしまったが、本題というべきなのか馬のこと。
このゲストランチは約100頭の馬を所有しており、馬のクオリティはかなり高いと感じた。
どの馬も非常におとなしく、放牧地では多頭いるにもかかわらず微動だにせず日向ぼっこしている。各馬のコンディションも良く、ありがちな高齢馬を使うでもなく、従順かつ走ればパワフルという理想に近い馬たちだった。乗馬中に落鉄しそうな音が気になった私の馬の左後は次の日には新品の鉄が打たれ管理にも好感が持てた。
ただ従順とはいえ、時としてライダーがしっかりコントロールしないと、ライダーより前の馬がリーダーになる場面は多々見られた。でもこれは馬の本能もあるからとても難しいことなのだけど。
 また、駈歩で丘を駈けあがる時、腹帯が緩み腹の下にサドルがまわって落馬するという事態が起こったが、その時、馬はじっとそこに立っていた。
これはしっかり馴致された穏やかなクォーターホースや中半血ならではかもしれない。
これが若馬や軽種だったらと考えるとちょっと怖い・・(幸い、人馬とも怪我はなかった)この手の馬たちはたいがい万一落馬してしまうと必ず乗り手のそばにくるか、そこにじっとしている。こんなことは特別教えたわけじゃないけど馬と人間とのリーダーシップがしっかりとれているからこそではないかと思う。
経験上、今まで関わってきた馬の大半はこのタイプだから。(その陰には主人あり・・)
 ある日の早朝、ラウンドペンにて、中に1頭の若馬がいた。まだ2歳くらいだろう、少しスプーキー(怖がり)な、その馬にチーフカウボーイがビニール袋でパッティングしたり、ロングリードを体のいたるところに当てていた。我々のランチと同じようなやり方でしっかり馴致されているな!!となんだかうれしくなった。
その後、その子はヒッチングポストに繋がれジタバタしようが立ち上がろうが、みんな知らん顔で夕方には観念して疲れた顔でぐったりとしている。それがとてもおかしくもあり、またかわいかった。
こうやって大人になるのだから頑張りなさいよ、と声をかけてねぎらってあげた。


  


この続きはスライドでお楽しみ下さい。たくさんの写真になりましたので2編に別けました。<それぞれクリックでスキップします>
1編は宿泊地「マウンテンスカイランチ」の広〜い敷地内の外乗です。2編は「イエローストーン」への遠征外乗です。