成田検疫所日記

2005年の思い出

最近、古い書類のファイルの整理をしていたら、当クラブのレイニングホース達をアメリカから輸入した当時(2005年)の日記がでてきました。
彼女達(馬のこと)は飛行機で成田に到着し、検疫所で約2週間過ごさなければならない規則なのです。検疫所で発熱や発症がなければ無罪放免というわけです。そこで経費削減の為に、不肖、私Megがお世話しにいきました。

成田検疫所日記-1

7月7日(木)
たなばたさま。7月7日7時着。LUCKY SEVENに待望の馬たち到着!!・・・・こりゃ! さい先よろしい。
(1便後にシーザリオ到着とのこと。会いたかった!!)
若い女の子が珍しいのか、やけにはしゃぐオジサン連中と共に駐機場へ。
成田の駐機代(駐車代みたいなもの)は世界一高く、70万円だって~、1回が・・・・・・・・。
JRAのワカタカ号にすんなり積み替え、キョロキョロする3頭を検疫1号馬房へ。
ノーマジーン、ダスティ、アラブのスタリオン君、ようこそ日本へ!!2時間位静かにした後、検温。問題なし。
今日はゆっくりお休みなさい。

7月8日(金)
3頭とも食欲旺盛。
ダスティは輸送のストレスからか、一番若いせいもあり早くここから出して~~と、全身でメッセージを送る。
だけどね、採血が終わらないと出せないのよ・・・・。そんなダスティを見た獣医さん、こりゃ血採れるかな・・・・??
・・・と、ちとビビる。しかしながら、おとなしく採血。結果は◎良。 一番にダスティ(^0^)お散歩タイム。馬場はなく、放せないのでリードで引き運動のみ。とんだりはねたり、うれしさいっぱいで、戦車のような体で表現してくれるから、おかげでMegさん注目の的だったわよ。
ノーマジーンは、とてもエレガント。飛んできたビニール袋にびっくりしたから慣らしました。彼女はとても頭が良い。
それが何かを理解し、すぐにおどろかなくなりました。また、明日もね。もう1頭のアラビアンホースは、ハンサムな栗毛のスタリオン。でも、ちょっとやせ気味で丸々とした、うちの子たちを見た後、見ると、あばら骨がやけに目立ってます・・・・・。彼も、とてもジェントルホースです。いっぱい草あげるから今のうちに太ってね。馬房がおがくずではなくワラなので、これは初体験。いまいちコツがつかめず、手間取ってます。手に豆ができて新鮮です。

7月9日(土)
本日、成田検疫所の方たちは、お休みにて、誰一人この施設内におらず・・・・。(普通、当番とか、あるんやないの~(*0*)!?)他の家畜もおらず、私一人と馬3頭のみ。
今日、何かあって倒れたら終わりだ・・・・!!と気合を入れて仕事に臨む。ダスちん、あいかわらず元気いっぱい!!・・・・というか・・・もしかしたら、何か精神的に不安定で何かを云わんとしているような・・・・。 手入れしていたら、咬むようなそぶりを見せたり立ち上がろうとしたり・・・・。考えつつも、とりあえず、沢山運動してあげようと調馬索をする。汗かくまで・・・・した。
ノーマジーン、調馬索にはあまり意欲的ではなく、walkに変える。とてもマインドの落ち着いた馬。
アラブのスタリオン君、どんなに調馬索(jog)しても、さすがアラブ。呼吸ひとつ乱れず。素晴らしいエンデュランスホースの素質を垣間見ました。

成田検疫所日記-2

7月10日(日)
昨夜、熱っぽい頭で考えた末、ダスティの心理的不安は3頭皆並んだ馬房におり、完全にとなりが見えない造りになっている為、通路をはさんでむかいの馬房なら、きっと落ち着く!!という結論に。
本当は検疫所の人から、他の馬房は消毒済みですので・・・・と言われていたのだが、「休みだし許可を得るのに、もう一日は待てない」と自己判断し、私の独断でダスティの引越しをしました。何か言われたら“馬のため”という、これ以上はない理由があるし!!!(*このことを昔からの親友に話したら、メグは反抗的な若い頃と変わっちょらんね~、さすがメグ!と言われた・・)
結果は・・・・大成功!!今までソワソワしていたのがウソのように落ち着きました。馬の心理学なり。おまけに今日は初日からずっと続いていた微熱(風邪っぽさ)がなくなり、気分爽快に仕事ができました。
その証拠に今日はビールが飲みたい心境になり、2本飲みました。:(ビールは元気になったら飲もうと3日前に注文してました)¥(^0^)¥
余談ですが、私の暮らす宿舎は改築されて新しいのですが、部屋にはだんご虫ややたらでかいアリや、ムカデみたいな足のたくさんある奴などが、たくさん遊びにきます。居るのはいいけど刺されたらいややな~と思い、毎朝掃除機をかける習慣がつきました。
枕元にいたりして、ビックリな朝です。それと毎食弁当が支給されるのですが、飽きてこの土日は、どんべえやパスタ、(レトルトソース)がやけにおいしかった。(土日は弁当も休み)
ビールのつまみは塩!!(.>0<)・・・・・ 枝豆がたべたい。お好み焼きがたべたい。アイスクリームがたべたい。普通の生活って、ほんとに幸せなんだな~。

7月11日(月)
6:00amエサやり。今日も暑くなりそうな気配なので、7:00amより馬の運動を始める。
それぞれの個性もつかめてきて、馬たちもやるべき事が分かってきたようでスムーズにいくようになってきた。突然ですが、施設の紹介、馬房と宿舎が一体になっており、夜、馬の見廻りに行く時や雨が降ってても、非常に便利。馬中心の生活なので、これ以上いい造りはないでしょう。この厩舎から出るのはボロ捨てと運動だけ。その他は一切でれない。ある所にFAXが送りたくても、外部へ出てはイケナイ。会う人間はお弁当持ってきてくれるお兄さんと獣医さんのみ。ものすご~く孤独です。

7月12日(火)
馬に、ここまで感情(表現力)があるのかと、びっくりした出来事。いつも、運動が終わって厩舎に入る前、馬の足が泥だらけになるので、入口脇の水道で足を洗ってから全頭部屋に入れていた。ダスティをいつものように運動した後、今日はさほど足も汚れていないのでそのまま入れようとすると、入口でピタリと止まり、右(水道)の方を向き前かきをしたのだ!!ダスティの目的は足をきれいにすることではなく、その時わずかに食べれる草。しかし、あのダダこねぶりはおどろいた。“入るのイヤヤ~”ってUターンするとスタスタついてくる。内心かなり面白かったがなめられてはイカンとカツを入れた。すると、しぶしぶ厩舎に入る。すると、また馬房の前でピタッ。“部屋に入るのイヤヤ~”“まだお散歩したい~”しかし、そこでまた、喝!!・・・・しぶしぶ入る。
ノーマジーンなんかは馬房が一番落ち着く~って、すんなり、というか、自ら入りたがるのに。ものすご~く、対照的なので面白い。個性的な馬たちだ。

成田検疫所日記-3

7月13日(水)
毎朝、夕の検温。アラブのスタリオン君は、最初イヤがっていたが、だいぶ慣れておとなしく計らせてくれるようになった。しかし、今度は次なる問題児。ダスティだ!!。最初は何てことなかったのに、急にイヤイヤモードになった。明らかにこれはワガママだ。今まで以上に喝!!を入れ(プレッシャーを与え)狭い馬房の中で緊張した空気が張り詰め、観念してじっとしていたので、大いにホメた。初めて、彼女が口をムニャムニャして、チューイングサインを見せた。(ここまでせんと効かんのか)と思った。散歩でもエサでも、たいがいの事は望みをかなえてる・・・(つもりだ)ノーマジーンは運動中に砂をなめる仕草をしたので、これはミネラル不足だ!!と思い、早急に塩を手配してもらった。アラブのスタリオン君は、なんとアスファルトをなめだしたので同じサインだと気付いた。3頭とも塩を与えると、うれしそうにずっとなめていた。この限られた環境で充分なエサと水といつも清潔に心がけている敷きワラと、出来る限りの運動。それなのにダスティはバケツをガランガランとならし、前かきをして私を呼ぶ。最近、私が甘いのか、ワガママが過ぎる気がして、しばらく無視することに決めた。別の仕事に移る。“あっ・・そうだ扇風機だけ、つけとこうか”スイッチを入れる。すると彼女は涼風にたてがみをなびかせ、前かきをやめた。“しまった!!!また彼女の望みをかなえてしまった・・・!!” (^0^)\涼しげな顔で私を見下ろす彼女。毎日が厩舎物語である。

7月14日(木)
朝は小雨。運動に行けず、ダスティの催促も無視。そのかわり、午前中は馬房掃除と個々の手入れを徹底的に。ノーマジーンは耳に何かできていて、耳を触ろうとすると、ものすごく嫌がる。時間をかけて、それをならした。(午後から消毒してみようと思ったので)だいぶ慣れた。午後、消毒する時も獣医さんを警戒していたので、私がやりますと薬だけ頂いた。結果は◎。だまし2・・ではあるが落ち着いていてくれた。ダスティ、何でこんなに毛ヅヤがいいの? と獣医さんにほめられる。昼から雨もあがり、お散歩タイム。またしても驚いたことに、ホルターとリードを見たとたんに、ブフフフフ~っと鼻をならして喜んで催促。もちろんダスティ。犬か?君は。という位のはしゃぎようで面白かった。ノーマジーンに関しては、すごく真面目な馬だな~と思うのは一度指示したら、次の指示があるまで絶対やめない。例えばJOGをコンスタントなスピードで、ずーっと続ける。これは素晴らしい。(ダスティ、アラブのスタリオン君はたいがいやって疲れてくると、もういい?と私の顔を見に来る)。ただ、JOGはまだ踏み込みが浅く筋力をあまり使わないJOG。実際少し筋力が落ちているように思う。
牧場についてから、しばらく筋トレだな。

7月15日(金)
ここの場所を説明すると、成田の滑走路の目の前。フェンスが窓を開けると目の前なもんで、騒音がひどい。TV見てても何度も中断(電波も悪くなる)、携帯でTELしてても電波が途切れることもしばしば。特に夜、早い時間に眠くなるもんで、そうとうな騒音に悩まされた・・・ことはあまり記憶していない。私が私で良かったと思うこと、どこでも寝れる、順応性のある性質。これは素晴らしい。おかげで爆睡。爆音と共に・・・・・・(un believable !!)夕方7:00位に、汗まみれなので、まず風呂に入る。風呂場の小窓を開けると、飛行機の離着陸が5分に1機くらい見れて、なかなかぜいたくな時間だ。別に飛行機マニアではないが、”Iran air”とか見るとホ~とか、フェデラルエキスプレスを見ると、あれで“ROD’Sが届くのだな、とか、いろいろなドラマを想像して結構楽しい時間である。夕方、運動を開始しようとしてたら、お兄さんが「あっ、ロングリード使います?」って、え~、あるなら早く言ってよ~。ついでに追いムチも。これで楽になるぞ~。今日は、何故かノーマジーンが私を見て鼻を鳴らす。(エサは、もうあげてるのに)おぉ~、君も少しは自己主張するようになったか。よしよしと、運動場に連れ出す。ロングリードに着けかえるや、いきなり走り出す。マナーが悪いので一度止め、JOGをさせる。なんでこんなに元気なのだ?あ~そうだ、今朝は、暑くなってきたのと、ハエをものすごく嫌がったんで、10分くらいでやめたんだった。馬ってすごいな~。・・・・ともあれ、ロングリードのおかげでメグも楽チン。馬満足。ノーマジーンも今日はすごくいい歩様をしてた。次、アラブのスタリオン君。いつも静かに、すまし顔の彼はロングリードにしたとたん、本性を出した!! なんじゃ~、コイツは!? 今までロープは出していなかったが、ちょっと走らせたとたん、イキナリ暴走。自らテンションを上げ、指示を聞く状態ではない。半分パニック!?リードを引いても、それに反発して、反対方向に逃げる。で、ヤツの行く方を、コーナーに追いやり、とことん走らせる。しかし力対力なので、かなり苦労した。少し観念したようなので、今日のところは終わり。だが、しかし、この馬を調教したところで、何がプラスになるのか??私もプライドはある。でも与えられた仕事は、何事もなく無事に19日に馬を引き渡すこと。明日から3日間、またも誰も居ない施設で、危険を冒すのはやめようと決めた。プライドより身の安全をとろう。(人馬共々)明日からJOG only。その後、ダスティ。今までのリードロープの気分で、私の周りから離れない。ムチで軽く追い走らせる。おぉ~スバラシイ。 リードのわずかなテンションを感じ取り、決して、それに反抗することがない。決められた円周から外へも内へも行かず、キレイなサークルを描く。“これか!!調教の差は” 大発見!!パワフルなロープながらもヤツのように、out of control にならない。さすがだ!!明日からの3日間、気を引き締めて臨もう!!

成田検疫所日記-最終回

7月16日(土)
何事もなく、決められた仕事をこなす。
今日は、いつもの兄ちゃんも、獣医さんも来ないので、唯1人、会う人もなく、人間と会話することもなく、黙々と仕事ができた。実は私、こういう環境が好きなんだ。
トモちゃん(親友)に・・「世捨て人になるのも、たまにはいいよね。ぜいたくな時間だね」と前の晩TELで言われたが、まったく、その通りだと思う。いつも、私を見てる人から見れば、“信じられない・・・”と思うかも知れないが・・・・・。(でも、あるお客さんとTELで話してたら、こんな私の本性を見抜いてたケド・・・)
仕事は肉体的に決して楽ではないけど精神的には、とても楽な毎日です。いろんな方から寂しくない?ってお電話頂いてますが、心配ご無用です。(^0^)¥夜は、英語のお勉強に励んでおります。

7月17日(日)
本当の、世捨て人になってもうた。 ケータイを水バケツに落とした!!撃沈・・・・。
でも、よく考えたら、ほんの少し前まではケータイなんてなくて当たり前だったよね。 まあ~いいか。
これで人生変わる訳じゃなし。でも、心配性のTomが心配するといかんわね。そうだ、財布にテレカがあったっけ。(公衆電話は一応あった)久々の緑の公衆電話、クモの巣はってたけど・・・。
・・・・まあ~、いいか、といったものの、ものすごく困ったことに気付いた。 目覚まし時計だ!!(ケータイは目覚まし時計代わり)・・・・やばい!! 19日出発の日は 4:00起きくらいの予定だったのに。
しかし、フツーに時計がない。ナイナイと探しまわったところ、クーラーのリモコンに現在時間が表示され、ひと安心。 さあ~、あとは気合だ!!ところで、今日は蒸し暑く、調馬索の時に、ハエが急増!!
馬 みんなイライラ。(フライスプレーがほしいー!!) ノーマジーン、ダスティは運動がイヤになり、ホルターを見ると、クルッと後ろを向き、“行きたくない・・・”と言っていた・・・。分かり易い・・・。
しかし、こっちの暑さでバテて、宮崎の暑さを乗り切れるか・・・。

7月18日(月)
ここで過ごす最後の日。
・・・・しかし、暑い・・・・。厩舎内でも31℃になってた!! 外は35℃くらいかな?
相変わらず運動に行きたがらない馬たち、でも明日輸送だから、今日は軽めにでも動いとかんと・・・。
無理に連れ出す。10分位で切り上げる。ところで!!
ケータイが生き返った!! 水没してすぐ水気をふき、電源を切り、扇風機の前に吊るして一晩置いてみたのだ。(内野君に教わった)、・・・朝、電源を入れて感動!!すげ~!!
日中、暑すぎるので、厩舎内で入念に馬の手入れ、あと、輸送用のシッピングブーツにも慣らす。
歩くのイヤがってたけど、じき、慣れた。それから、大そうじ。厩舎と宿舎。・・立つ鳥、後をにごさず・・・。
夕方、いつも通り検温。 なんてことない作業・・のハズが・・・!!ピィ~、と鳴いて、イキナリ、アラブのスタリオン君、後肢をケリ上げた!! 尻尾を上げたとたん・・・。なんじゃ、コイツはー!?(PARTⅡ)。イミが分からん・・・・・。あやうく、かわしてセーフ。事故とは、こういう“普段“に潜んでいるものだ・・・と改めて実感・・・。
一生懸命、ヤツを理解するに、この暑さと、ハエのイライラで、そういう態度にでたのかな、と。
しかし、許される態度ではなく、天罰は下った・・・・。腰痛が、そろそろピークかも・・・。 いい潮時かな・・・。

7月19日(火)
* これは宮崎に帰ってきて、トレーラーで書いてます。
今朝、ケータイ様のおかげで、4:00起床。 エサあげて、検温して、涼しいうちに3頭とも軽く運動。
7:30にお迎えのトラックが門扉の向こうに見えた。ボロ取りして、厩舎をキレイにして、3頭共、手入れ。
9:00 積み込み開始。 ダスティはトラックが見える前から何か違う!!と、悟っていたようで、やけに、いなないていた。いろいろ、訳ありで、馬運車2台。全頭スムーズに積み込むことができた。“こんなにスムーズなのは、珍しいねぇ~”と検疫所の方たち。そうだ、初日の、あのハイテンションな、オジサン達・・・。
“やっぱり、彼女がイイからじゃないの!?”一度しか会ってないのに、私の何が分かるんだろう・・・。それに、やけに意識して、格好をつけて、部下やドライバーさんに怒鳴って、すげー、冷めた・・・・。はっきり言って、ものすごく格好悪い。ブザマな男。(約1名) もっと他に言い方があるでしょうに・・・。反面教師としましょう。
まー、最後の最後で残念だったけど、全体的には、私としても良い経験になりました。そうそう、面白かったのは、輸送の疲労や熱を防ぐ為の注射を打つのですが、検疫所内では規定があるらしく、(治療の為ならOK、予防は×)門扉を出てから、別の獣医さんが待機していて、そこでトラックに積んだまま打った。「変なの!!」と言ってしまった。「変でしょう」と獣医さん。なんか、パチンコ屋のトナリのラーメン屋さんみたい。検疫所の人は見てないことに・・・ということだった。
あとは、宮崎に無事到着するのを待つだけだ。ドライバーさん、頼んだよ~!!。


2005年7月9日から11日間の成田検疫所での貴重な体験でした。・・いかがでしたか??
それぞれの馬たちは元気に過ごしていますよ!!・・・・また、いつかメグの体験でおもしろいかな?と思うことがあった時は体験談として掲載したいと思っていますので、よろしく・¥(^0^)¥


ここまで読んでいただいたみなさん
ありがとうございました。